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子供のよくある病気
赤ちゃんの「夜泣き」
◎夜泣きをどうしたら
昼間であれば平気なのですが、夜間だから困るわけですね。どんなときに赤ちゃんは「夜泣き」をするものでしょうか。対策を考えてみましょう。
- 発育のめざましい赤ちゃんは、夜間にもおっぱいをのみたくなります。生後2~3カ月の小さな赤ちゃんでは、一夜に2~3回も乳をもとめることがあるのです。こういう夜泣きには、時間もかまわず乳をあたえてください。
- 5~6カ月になって知恵づきがめだちはじめると、不安や興奮で泣くことがあります。眠りが浅くなったとき、身辺にお母さんを感じなければ、不安になって泣きます。環境がかわって興奮することもあります。泣いたら抱いてやってもよいし、添い寝をして乳をふくませてもかまいません。両親が睡眠不足になってしまうようであれば鎮静剤を使うのも一法。医者に相談してください。
- 生まれたばかりの子は、夜中に遊びたくなることがあります。あまり運動しないので、夜も目が覚めてしまうのです。日中もっと活動的な遊びをさせるべきです。
- ぎょう虫のために、おしりがかゆくて寝つきがわるくなることもあります。夜、寝つこうとするとき、肛門のところをあけてみてください。長さ10ミリくらいのぎょう虫がみつかることがあります。虫下しをのませます。
赤ちゃんの夜泣きは、大人の不眠症と本質的にちがいます。幼児の寝驚(ねぼけ)ともちがいます。
赤ちゃんは夜でも起きたくなるのに、親は夜休まねばならない。この親子の生活の「ずれ」からくる悩みを「夜泣き」といっているにすぎないのです。だから夜泣きの対策は、この「ずれ」をどの程度に我慢し、どのように調整していくかということになります。
赤ちゃんの生活のリズムは大人の生活に近づいていくので、夜泣きの悩みは、改善されてしまうものです。
幼児の寝驚(ねぼけ)
恐ろしいテレビをみた晩などに、ぐっすり寝込んでいる子どもが、突然おびえて泣き出したり、興奮したり、恐怖の状態になることがあります。この混乱状態を落ち着かせようとしても反応しませんが、数分から十数分でやむものです。翌日きいてみると、本人は覚えていないのです。
このような「ねぼけ」を医学用語で夜驚といいます。夜驚も、1~2回ですめば問題はないのですが、毎晩つづいて家族が睡眠不足になることがあります。対策は、子どもを不安にするような原因を取り除いてやること。怖いテレビ番組や興奮するような遊びは避けるほうがよいでしょう。親が睡眠不足になるようであれば、子どもに鎮静剤を使用してもよいでしょう。
溶連菌感染症
へんとう炎はいろいろの病原体によっておこります。そのうち溶連菌でおこるものは、症状がつよく、治ってもすぐに再発したり、発疹がでたり、合併症をおこしたりするので要注意です。
溶連菌はノドにすみつきやすい最近です。ときには健康な人のノドにすみついて、なんの症状もなく過ごします(健康保菌者)。溶連菌には、毒力の強いものや弱いものや、いろいろのタイプがあります。毒力の強い菌が人のノドについたり、毒力の弱いものでも抵抗力のない人に感染したりすると、ノドに炎症をおこします。
溶連菌に感染すると、2~3日の潜伏期間をへて、ノドに炎症をおこします。ノドが真赤になって発熱し、舌はいちご舌と呼ばれる状態になります(溶連菌性へんとう炎)。また、たくさんふえた菌から出た毒素が血液に吸収されて、皮ふに赤い発疹のでることもあります。(この状態が猩紅熱です)。あとで手足の皮ふがむけてくることもあります。早期に治療されると症状が少なくなって、発疹もちょっぴりしか出ないこともあります。
猩紅熱は昔は恐ろしい病気でしたが、いまは抗生物質でかんたんに改善します。名前も溶連菌感染症ということが多く、猩紅熱といわなくなりました。現在では生命をおびやかす病気ではなくなってしまって、合併症が心配な病気となっているのです。
溶連菌感染によるへんとう炎も猩紅熱も、他のへんとう炎と同じように改善するものです。注意せねばならないのは、熱がさがった後で血尿や浮腫のでる「急性糸球体腎炎」、小出血斑や腹痛、関節痛のでる「血管性紫斑病」、発熱、心臓の弁膜症をおこす「リウマチ熱」などの合併症をおこすことがあるということです。
治療は、ペニシリン系統のクスリがよく効きます。ただし、クスリで熱もさがり治ったようにみえても、ノドについた菌はなかなかとれないのです。短期間で服用を中止すると、再発を繰り返すことがあります。
服用は10日間くらいつづけます。合併症を防ぐためには、はじめに十分に治療することが大切です。また後日、検尿で血尿の有無をしらべましょう。
こどもの口内炎、いろいろ。-伝染性歯肉口内炎と鵞口瘡
口内炎もいろいろです。ウイルスによるもの、カンジダが繁殖して起こるもの、原因不明のものなどです。代表的なものは下記の3種です。
- 伝染性歯肉口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎)
幼児期に多い口内炎で、ヘルペスウイルスの感染で起こります。潜伏期間は2~7日間。症状は、まず発熱です。熱がでたばかりのときに診察すると、のどが赤いだけで、医者は「かぜ・へんとうえん」などと診断することになります。熱がつづいているうちに歯ぐきがはれて出血しやすくなり、口の粘膜いっぱいに小さなカイヨウを生じ、歯肉口内炎であることがわかってきます。熱は5日くらいでさがり、それから痛みがとれてきて、粘膜のただれも1~2週間で改善します。
問題は食物のあたえ方。刺激の少ないものをえらび、かたいもの、熱いもの、酸味のつよいものなどはさけます。冷たい牛乳、アイスクリーム、ヨーグルト、ミルクセーキなどは、食べてくれることが多いようです。水分だけでも、なんとかくふうして飲ませてください。
歯肉口内炎の治療もいろいろですが、口のなかにクスリをぬるかどうかは、医者によって考えがちがいます。ただれた口の粘膜いっぱいにクスリをぬられたら、どんなに苦しいことでしょう。私は、のむクスリだけで治療しています。 - 再発生アフタ(反復性アフタ性口内炎)
大人に多い口内炎ですが、伝染性歯肉口内炎と混同されやすいので説明しておきます。再発性アフタは反復してかかることが多いのですが、原因は不明です。歯肉口内炎のような発熱が多いのですが、原因は不明です。歯肉口内炎のような発熱やひどい痛みはありません。粘膜のカイヨウ(アフタ)は1個~数個くらいなので、ぬるクスリで治療します。1週間ぐらいで改善します。 - 鵞口瘡(口腔カンジダ症)
赤ちゃんに多いのは、なんといっても鵞口瘡(口腔カンジダ症)という口内炎です。カンジダというカビが繁殖しておこります。赤ちゃんのほっぺたの内側に乳カスのようなものが生えていて、いくぶんお乳ののみがわるくなることもあります。ファンギゾンシロップという内服薬を、のませる代わりに口腔に滴下して治療するという方法もあります。
熱性けいれん
◎熱でひきつけたら
こどもがひきつけているのを見るのは恐ろしいものですが、ひきつけそのものは、たいして危険ではありません。たいていのひきつけは、手当をしてもしなくても、ほんの短い時間でおさまるからです。
こどもは、しばしば、熱の出はじめにひきつけるものです。ひきつけたら、衣服をゆるめ、手足を自由に動くようにし、顔を横にむけて吐きやすいようにします。口に割りバシなど入れる必要はありません(最初に舌をかまなければ、あとは、もうかまないからです)。長い時間つづいたように思っても、たいてい数分間で自然におさまっているものです。けいれんがおさまってから、医者の診察を受けてもおそくはないでしょう。発熱の原因を確かめておくことが大切です。「ひきつけてもあわてるな」と申しましたが、これはあくまでも、今まで元気だったこどもが突然ひきつけた場合のことです。容体が悪くて、吐いたり下痢したり、高熱がつづいて衰弱したり、そのあげくにひきつけたという場合は、ことは重大。入院治療が必要です。
◎熱性けいれんを予防するには
熱性けいれんを繰り返す子どもでは、けいれんを予防するために、発熱時に抗けいれん剤を使用するという方法があります。ジアゼパム坐薬(0.3-0.5mg/kg)を発熱初期と8時間後と2回使用するという方法です。発熱初期の1回使用でも十分なことが多いようです。抗けいれん剤使用のタイミングを逸してひきつけてしまった場合でも、この坐薬を使用して、けいれんが長びかないように治療することが可能です。
一般には、2回以上熱性けいれんを繰り返した場合に抗けいれん剤が処方されていますが、「強いけいれんが長びいたので、とても心配だ」というのであれば、1回だけの子どもでも、ジアゼパム坐薬を用意しておくとよいでしょう。
◎気がかりな熱性けいれんもあります。長い時間ひきつけて、てんかん合併や脳障害が疑われる場合です。「どうも普通の熱性けいれんと違う」と思われるものでは、脳波などの検査が必要になります。
(2002.12改訂)
便秘のこどもをどうするか
便秘の原因について
(1)食事性便秘:母乳不足や野菜嫌いなどによる便秘。
(2)習慣性便秘:排便習慣の不良、または排便恐怖による便秘。
(3)大腸の先天的病気による便秘。
◎赤ちゃんの便秘。
赤ちゃんの排便は、1日何回というきまりがあるものではありません。毎日4~5回も出るこどもがいるし、2日に1回しか出ないこどももいます。それで赤ちゃんが苦しそうにするとか、排便のたびに泣くとかいうのでなければ、毎日1回排泄させないといけないことはありません。赤ちゃんでは、便が硬くなって苦しむかどうかが問題なのです。
赤ちゃんの便秘は体質的なものが多く、たいていは生後1カ月ぐらいから現れてきます。離乳食をはじめるころから軽快することが多いですが、4~5歳まで便秘がちのこどもも少なくありません。2~3日に1度の便でも軟便で機嫌や体重の増加がよければ心配ないでしょう。便が硬くなって苦しむようなら、まず、食事に通じのつくものを与えて自然排便を工夫します。3日も出ないで苦しむようなら、浣腸してあげてください。母乳栄養児で便秘がちな赤ちゃんは意外に多いものですが、便が固くなって困ることは、ありません。
◎便秘のこどもをどうするか。
かぜで発熱したり、旅行で環境がかわったりすると、こどもは、しばしば便秘して腹痛を訴えます。浣腸してあげてください。浣腸のやり方には、グリセリン浣腸(イチジク浣腸)、こより浣腸、坐薬などがありますが、どの方法でも差し支えありません。
ふだんから便秘がつづくこどもには、まず食事に通じのつくものを与えて、自然排便を工夫します。果汁、野菜、マルツエキスなどを1日数回あげてみてください。食事で軽快しない場合は、医師と相談して緩下剤を使用します。それでも3日以上の便秘がつづくときは浣腸です。このような治療は、便秘しないようにクセづくまで、数カ月もつづけることがあります。
“浣腸はクセになる”といわれていますが、これは、食生活の改善をさぼりがちな人たちに対する戒めだと考えてください。浣腸を恐れて排便させなければ、便はさらに固くなり、痛んだり、出血したりして便秘グセはますますひどくなります。
〔便秘の治療〕便秘は食事性または習慣性のものが大部分で、食事療法と排便の習慣づけが大切です。赤ちゃんでは果汁やマルツエキスを、幼児では野菜、豆類、いもなどを多く与えてください。幼児では、決まった時間にトイレに行くように習慣づけること。便が硬くて出血する場合は、排便恐怖症になるので、緩下剤を使用します。
先天性巨大結腸症という外科的治療の必要な便秘もありますが、このような便秘はあまりありません。
子どもの急性喉頭炎。クループ -のどの奥のかぜ-
子どもが急に息をつまらせて苦しむ病気にクループ(急性喉頭炎、のどの奥のかぜ)があります。親はあわてますが、ほとんどの場合、数十分で自然に軽快することが多いのです。
多いのは、夜中に突然イヌのほえるようなかん高いせきをして、同時にヒーヒーとノドをならし、息が苦しくなるものです。とても寝てはいられず、起きあがって泣いたりしますが、こういうのはまずだいじょうぶ。湯気をたてて部屋を暖かくし、もし何か飲めるようならば、あたたかい水分の多いものをあたえ、しばらくようすをみていれば、そのうちに眠ってしまうものです。翌日、医者につれていけばよいでしょう。ただし、あまりひどくておさまらないときは、夜中でも病院につれていく必要があります。医者は吸入をするでしょう。
クループ(急性喉頭炎)にも、ときには心配なものがあります。それは、前の日から発熱していて、イヌのほえるようなせきをしていたのだが、だんだんと息が苦しくなり、ノドがヒーヒーとなるばかりで泣き声も出なくなったような場合です。このようなものは、そう簡単にはなおりません。入院することになるでしょう。
<<かいせつ>>
のどの奥の声帯の近くが炎症をおこし、声がかれたり、ヒーヒーと息が苦しくなったりす病気を、まとめてクループと呼んでいます。
クループの原因もいろいろです。多いのは、かぜウイルスの感染によるもの、ノドかぜの一種なので感冒性クループといいます。
めったにないのですが、危険なのは、細菌感染によるクループ。呼吸困難がつよくて窒息しやすく、また高熱もでてきます。なかでもジフテリア菌によるクループ(喉頭ジフテリア)は予防接種のなかった時代には、たくさんの子どもが死亡していたのです。
特定の子ども、特定の家族に反復して起こる傾向のクループもあります。このようなクループはゼンソクに移行する場合もあって、アレルギーが関係していると考えられ、アレルギー性クループと呼ばれます。
手足口病
手足口病は、その名のように、手のひら、足のうら、口の中に小さな水ぶくれができる病気です。おしりやひざにできることもあります。乳幼児の間で流行します。熱はないか、あっても微熱程度ですみます。手足の水ぶくれはあまり痛がりませんが、口の中が痛くて食べられなくなることがあります。約1週間で改善します。(水ぶくれは手・足・口の全部に出るとは限りません。手のひらだけのこともあるし、口の中だけのこともあります。)手足口病の潜伏期は3~4日です。原因になるウイルスが幾つかあるので、何回も繰り返してかかる子どもがいます。
[治療]
治療をしなくても自然に治る場合がほとんどです。高熱があるときはクスリを処方します。口の中が痛いときは、しみないものを与えてください。熱いもの、塩味や酸味の強いもの、かたいものは控えましょう。冷たい牛乳、アイスクリーム、ヨーグルトなどは食べてくれることが多いようです。
[保育所・学校へは?]
行ってよいかどうかは症状しだいです。
<<コメント>>
手足口病は集団的に発生することが多いのですが、患者さまを隔離しても、その流行はやみません。なぜでしょうか。
手足口病のウイルスは口の中や便中に排泄されて飛沫感染や経口感染をおこすのですが、その特徴は不顕性感染の多いことです。感染しているのに症状が軽すぎて病気と思われない子どもがいるのですが、この子どもたちもウイルスを排泄して感染源となるのです。手足口病のウイルスのもう一つの特徴は、排泄される期間が長いことです。病気は改善しているのに、1カ月間もウイルスを出しつづけている子どももいます。患者さまを隔離しても流行のやまない理由です。
日本小児科学会は次のような統一見解を発表しました。「手足口病は症状がないときでもウイルスが排泄されているので、感染防止は困難である。発疹があっても、他への感染防止を理由に登校(園)停止にする必要はない」。
◎こんなときはもう一度診療を
手足口病は軽い病気ですが、まれに髄膜炎を起こすことがあります。高熱が3日以上つづくときや、吐いてぐったりしているときには、もう一度診せてください。
蟯虫(ぎょうちゅう)の話
蟯虫の感染のしかたは、他の寄生虫とはちがっています。蟯虫は食物からは感染しないで、おしりから口へ、ヒトからヒトへと感染するのです。
こどもが寝床にはいって睡眠しはじめると、蟯虫が腸から這い出してきて肛門のまわりにタマゴを産みつける。このときが、かゆいのです。かゆさのあまり、無意識のうちに手でかく。その手を口に入れてタマゴが体にはいり込む。すなわち、自分のおしりのタマゴが自分の口からはいるので、ますますふえるというわけです。おしりをかいた手で兄弟や友だちとも手をつなぐ。兄弟や友だちも、そのタマゴをつけられた手を口にもってゆく。こうして家族や友だちにも感染していきます。
<<ちょっと一言>>
あたらしいタマゴが口からはいってこなければ、蟯虫が腸のなかでふえることはありません。蟯虫は寿命がつきて、いなくなってしまうのです。蟯虫の感染は、ありふれたことです。小児期にはだれでも、1度や2度は、蟯虫に感染するでしょう。そして大部分は、気がつかないままに経過して、改善しているのです。
蟯虫で困るのは、お尻がかゆいこと。こどもは、神経質になって夜泣きしたり、肛門部がただれたりします。この虫を発見するためには、こどもが寝てからしばらくして肛門のあたりを見るのです。1センチほどの白い細い、糸のようなものが動いているならば、それが蟯虫です。蟯虫のタマゴをみつける検査はセロテープを肛門の回りにあててはがす方法で行われます。
蟯虫を駆除するためには、服薬と同時に、再感染の防止が大切です。家族ぐるみ、集団ぐるみで駆除することもあります。こどもには、ふだんから手を洗う習慣をつけること。爪を短く切ってやり、下着も毎日とりかえること。布団にはたくさんのタマゴがおちているはずです。布団は時々日光に当てること。
<<ちょっと一言>>
家族ぐるみで駆除したのにしばらくたつとまた、蟯虫のみつかる子どもがいます。クスリが効かなかったというよりも、再感染が原因でしょう。家庭外で友だちからもらったのかもしれません。蟯虫がいる子どもは、治療するのが当然です。だけど、症状のない子どもまで「ムシがいるのでは」と神経質になることはないでしょう。
クスリを服用したあとの検査は1カ月ほど待ってください。再感染したタマゴが成虫になり、タマゴを産みつけるまでに、3~4週間かかるからです。
こどもの虫歯・歯列の矯正
アメリカ歯科医師会は「1歳の誕生日までに歯科を検診しましょう」と呼びかけているそうです。生えて間もない歯が虫歯にかかりやすいので、虫歯にならないように、歯科医師の指導を受けるべきだというのです。歯科で相談するときの手がかりとして「歯医者さんの話」をまとめてみました。
◎お菓子と虫歯
虫歯は、糖分を栄養にして繁殖する虫歯菌によってつくられます。虫歯菌が糖分を分解するときに酸が産生され、この酸によって歯がとけていくのです。ですから、糖分を多く含んでいる菓子類が、口の中、特に歯に長時間くっついていれば、虫歯になる可能性が高くなるのです。困ったことに、子供は甘くておいしいお菓子の味を一度おぼえてしまうとたびたび欲しがります。お母さんは「子供は、アメ、チョコ、ガムなどを食べるものだ」という安易な考えは捨ててほしいのです。間食としては、牛乳や果物、甘味の少なく、かつ、歯にくっつきにくいおやつをとるように心がけてください。おやつのあとにうがいをさせることも虫歯予防のコツです。小さい子供には、お母さんがガーゼやチリ紙などで歯の表面を軽くこすってやることもいいことです。
◎果物と虫歯
果物にも糖分は含まれています。しかし果物のなかのあらい繊維が歯についたものを掃除してくれるので、虫歯の原因になるものを除去することになり、結果的に虫歯予防の役割を果たしてくれるのです。ただ、糖分のたくさん含んだ果物は、虫歯菌の栄養分にもなるわけで、口の中にいつまでも残しておくことは好ましいことではありません。やはり、果物を食べた後でも、うがいぐらいは心がける必要があるでしょう。
◎虫歯の個人差
もともと、歯の表面はある程度、虫歯菌の出す酸に自然抵抗力をもっています。これは、歯の表面にある無機質、例えばフッ素(*)などの抗虫歯性元素が酸の力に抵抗するためといわれています。しかし、いくら抵抗力が強くても、常に酸にさらされていれば、やはり限界があるのです。また、抵抗力にもそれぞれの歯によって個人差があります。したがって、歯の表面を清潔にする努力は必要なわけです。不規則にだらだらとお菓子を与えられている子供は、その量がたとえ少なくても歯の表面はいつも不潔なので虫歯になる確率は大きいことになります。
*フッ素の歯面塗布が虫歯予防の処置として行われています。
◎歯磨き
1歳ぐらいの乳児にはお母さんがガーゼを指にまいて水に浸し、歯面を拭いてやりましょう。綿花を楊枝に巻きつけて拭いてもよいでしょう。2歳ぐらいになればお母さんが歯ブラシを持たせて歯磨きのまねごとをさせ、次第に歯磨きになれさせることが肝要です。もちろん、お母さんのチェックが必要で、子供の歯磨きの後、磨きなおしてください。3歳ぐらいになったら、子供も自立心が芽生えはじめます。この時期に歯磨きの基本をゆっくり教えることがいいでしょう。ここでいう基本とは、歯磨きが口のよごれを取ることです。磨き方にあまりこだわらないほうがいいでしょう。こだわりすぎると歯磨き自体をいやがってしまうからです。生活習慣は、あわてずにじっくり身につける必要があります。これを繰り返しながら小学校に入るまでに歯磨きを習慣づけましょう。歯磨きの好ましいことは、口の中の汚れをよく取るために、毎食後におこなうことですが、なかなか難しいこともあります。したがって、まず寝る前に歯を磨く習慣をつけたいものです。寝ている間は唾液の分泌も少なく、口を動かすことがないので、不潔になりがちですから。
◎歯列の矯正
歯並びがわるいのは審美的に困るだけではありません。歯が汚れやすいので虫歯や歯肉の病気にかかりやすいし、消化吸収の面からも好ましくないのです。
歯並びをわるくする原因はいろいろです。遺伝的なもの、虫歯の早期脱落、顎のアンバランス、過剰歯などのほかに、指しゃぶりや唇を咬んだり吸ったりする子どもの習癖によるものもあります。赤ちゃんは指やゴムの乳首などを吸うものですが、4~5歳になってもこのような癖がつくようだと要注意です。
育児相談のとき、赤ちゃんのうけ口(反対咬合)について質問されるのですが、1~2歳での判断は実は容易ではありません。赤ちゃんは奥の臼歯が生えそろっていないのでかみ合わせが安定せず、うけ口であるかのように見えるので困ります。4~5歳になってもうけ口が改善しないようであれば歯科医師に相談してください。その他、歯列がデコボコになる乱ぐい歯や、上下の歯が接触しない開咬などもまれにみられますが、歯列の矯正は一般に乳歯が永久歯に生えかわる時期に多いようです。
歯列の異常に気づいたら、なるべく早く矯正歯科の歯科医師に相談してください。そして予防の方法や矯正の時期などを指導してもらってください。